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第二十三話:『ラゴダ島の白い花』

 「南方のラゴダという島へ渡ったときのことなんですがね、」
 スマッフィーは薄紫のインクがしだいに濃くなっていく夕刻どき、きまって何かひ とつ旅の思い出ばなしを語りだすのを、このところの日課としていました。そんなス マッフィーとポッペンやプッピンたちの前にはエメラルドグリーン色のミント水が置 かれていましたが、それは「ディアボロ・マント(悪魔のミント水)」といって、異 国の都会で流行っていた飲み物だとスマッフィーはいうのですが、いったいそんなお そろしげな綺麗な飲み物がカフェーにあるものでしょうか? まあ、どうぞ、と今日 もスマッフィーはそのディアボロ・マントを二人にすすめながら話すのです。
「白いふっくらした鳥のような花が木にたくさん咲いていました。とてもいいにおい のする花です」
「それは、ムクゲかしら?」とポッペン。
――いいえ。
「わかった、 モクレンだ!」とプッピン。
――いいえ。ちがいます。でもどちらかというと、ムク ゲに似ているかもしれません。スマッフィーはもったいぶった口調でつづけます。
「咲き終わった花は、ああそうそう、思い出しました、その花はホワイトムースとい うのでした。咲き終わったホワイトムースはぽたり、ぽたりと地面に落ちます。
ところでそんな中に、咲き終わるとフイッと空へ飛んでいく花があることにぼくは気 づいたのです。それはごく稀で高貴な種類のものらしいので、ラゴダ島の住民たちで さえも、めったに目にしたことがないのだそうです。その白い花は、たった一人で飛 んでいったのです。フイッとね。よく晴れた日のことで、青い背景に白い鳥のような その花はどんどん飛んでいくと、やがて渡り鳥たちにまぎれて見えなくなってしまっ たんですよ――」

(おしまい)

 
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