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第二十七話:『ツィギー飛行士となる』

 いったい何があったのかわかりません。
 ついこの前のこと、青地に雲の絵が描かれた素敵な気球に 乗ったツィギーが、空からポッペンとプッピンの窓辺に手紙を 落としていったことは、みなさんも覚えておられるでしょう。
あのときは気球の青と白い雲の色がほんものの青空と雲の中に すっかり溶け込んでしまったからなのでしょうか、ツィギーの姿を みつけることはできなかったのでした。で、差出人の住所も「空の 上のツィギー」なのですから、返事を出すこともためらわれていた矢先に、 今度はなんと、巨大なレモン型の飛行船に乗って、両端のつぼまった ところのガラス窓から顔をのぞかせているツィギーらしい人物の顔―― 耳と頭のところにツギハギされた三角形の緑色のコーデュロイ生地に プッピンは絶対的な見覚えがあったのです――の写真が送られてきた のでした。その次は、三日月のヨット型――ただしこれは地面の上に あって、三日月の端っこが欠けていました。そして、お次は紙製らしい 巨大なコウモリ型の凧に乗った写真――これはつばさこそいさましかった のですが、凧と地面との間の距離は50センチメートルくらいだと私たちは 見積もっています――。
 次々に送られてくる、そんな不思議な写真が合計十一枚ほどもたまった頃。
「ぼくは飛行家になることに決めました」というごく短い文章――それゆえ きっぱりとした決意が感じられる――の手紙と共に、トンボ型の木と布と針金 でできた珍しいヒコーキ(それは離陸直前なのか、それとも着陸したところ なのか、地面の上にトンボのようにとまっていました)に乗ったツィギーの 写真が送られてきたのです。
「ははあ……」もう一同驚いてことばも出ないでいた中で、プッピンだけは、 トンボの羽根のように薄くて透明なつばさをじっと見て、
「なんだろう、セロファンみたいなガラスみたいなこの羽根は、 なんでできているのだろう」としきりにつぶやいていたのでしたが――。

(おしまい)

 
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