輸入手芸材料店【プチコパン】にようこそ!ボタン、アップリケ、ハンガリー刺繍の材料などいろんな国から直輸入の手芸用品をお届けします。

 

第三十二話:『再会』

「コツコツ!コツ!」せわしなくガラス窓をたたく音がして、 一同みあげると、もうほとんど葉っぱが落ちて裸同然となった外の木を 背景に、いつかの郵便配達ツバメが羽をふるわせながら立っていました。
「たまたま大事な忘れものをとりにこなくちゃいけなかったから、ついで だったからだけど、羽がこおってどうなるかと思った」
 ぽつりと一通の手紙を家の中に落とすと、つばめ氏はぞくぞく全身を震わせ ながらいうのです。そして、寒気や雷雨にあって配達がずいぶん遅れたこと を、今頃は南の島で隠居生活を送っているはずだったのにと、くどくどと 述べながらもぶじ手紙を届けてほっとしている様子でした。
「まあ、家の中でちょっとあたたまってからおいきよ」
 ハチミツをお湯でとかしたホットドリンクをプッピンが運んできました。
 あたたかなティーカップから次々と立ちのぼる透明な湯気をスチームがわり にして、つばめ氏はのびのびと羽を伸ばしました。
「その手紙をたくされた方はね、以前にうちの若いもんがトンビにやられそう になったところを助けてくださったのですよ」
 みなはハッと顔を見合わせました。あわてて手紙を開くと、そのたどたどしい字 で、必要なことだけが短くつづられた手紙の差出人は、ツィギーでした。
「XXヒコーキ大会にご招待します。ツィギより」
 ポッペンはあわてて手紙をひっくり返しました。
 裏はまっしろです。いえ雨風をくぐりぬけてきたらしく灰色です。 差出人の宛名は書かれていません。「ええ?これだけ?」
 ツバメ氏は長旅の疲れからかぐっすり眠ってしまいました。この手紙がいったい いつどこで投函されたものか、これではまるでわかりません。
 ですから、そんなことがあった三日後、先の手紙の差出人本人がひょっこりと 早朝の玄関に立ったとき、皆は一瞬、相手が誰だかわからないほどでした。
「ツィギー!?」パジャマ姿で駆けつけた皆の前に立っていたのは、ああ、しかし これがほんとうにツィギーでしょうか? ツギハギの縫い目ももはやわからぬほどに 全身まっくろにすすけて、プッピンがしっかり縫いつけた葡萄色のガラスの目玉も 片一方はゆるんでとれかかったようになっているこの人物、これが私たちの知る、 あの弱虫泣き虫のできそこないツィギーなのでしょうか?

「ぼくはこんなによごれるつもりはなかったのです」
 我らのツィギーは言いました。「でもヒコーキにのっていたら、竜巻きに さらわれてしまって」
「で、ヒコーキは?」スマッフィーは勢いこんで聞きました。
「はなればなれになってしまいました」ツィギーはしずかに答えます。
「ヒコーキ大会は? 手紙にあった」ポッペンも聞きました。
「それはとうに終わりました。ぼくは四位でした」
 みなはあんまりひさしぶりに互いの顔を見たので、大喜びするのも忘れる ほどでした。

(おしまい)

 
 おはなしtopにもどる  
 
  プチコパンtopにもどる