輸入手芸材料店【プチコパン】にようこそ!ボタン、アップリケ、ハンガリー刺繍の材料などいろんな国から直輸入の手芸用品をお届けします。

 

第四話:『ポッペンはただいま旅行中』

 「シロツメクサ、スミレ、タンポポ…… この青いマメ科の花はなんだろう……薄桃色の細長い花はなんだっけ……きれいだなあ」
 プッピンは「猫の額」ほどもある庭の中に しゃがみこんで、小さな花束をつくっています。
 ポッペンとプッピンの家の庭には、花屋さんにある ような花はひとつもありませんが、ヤマブキイロやピンク やブルーの名も忘れたほどの小花たちが、5月になるといっ せいに咲きそろってそれは見事なのでした。それらの植物は 花がないときはただの「雑草」と呼ばれるのでしたが……。
「ポッペンは今頃どこらへんにいるだろう」
 世界一小さい花束を楽しげにこしらえながら、プッピンは つぶやきました。
「ちょっと行ってきますよ」と言ってポッペンが旅に出かけ てから、今日で丸三日になるからです。その間、プッピンは ちょっと用向きがあって、ひたすら「帽子」をいくつもいく つもつくっていたのでしたが、この帽子の話はまた今度とい たしましょう。小花プリントのトンガリ帽子を最後にひとつ つくり終えたプッピンが、ふと庭をみるとそこにはたくさん の素敵な花が咲いていたというわけなのです。
 足がミントにふれるたび、薄荷の香りがただよいます。
 そのミントの、丈夫そうな茎を一本もらって、完成したばか りの花束をひとつにまとめていた時でした、ちくちくした芝の 間をたいそう歩きにくそうにしながらてんとう虫がやってきた かと思うと、「ホイ、手紙」と言って一枚の葉書をプッピンの 足元に届け、またすたこらと歩きにくそうに去っていったのです。
 それはひとさし指のつめの先ほどの小さな葉書でしたが、ちゃんと 切手が張ってあって、消印まで押されているらしいのでした。
「どーれどれ」花束と手紙を手のひらにのせてプッピンは家にもどり、 たいそう古めかしい虫めがねを取り出してきました。
 さて、以下がその葉書に書かれていた文句です。
「プッピン元気ですか。わたしは元気です。ここはとても素敵なところです。 森があって、いいにおいのする花がたくさん咲いています。のどが乾いたら 蜜の味のする美味しいジュースも飲めるんですよ。プッピンもいつか一緒に 来ましょう。もうじき帰ります。では。ポッペンより」

 台所の窓からは、いい風が吹いてきます。
 三時のおやつに何をたべようと考えながら、プッピンは気持ちよくて ついうとうとしています。
 世界一小さな花束と小さな手紙が食卓の上には飾られています。

(おしまい)

 
 おはなしtopにもどる  
 
  プチコパンtopにもどる