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第十一話:『雪の結晶』

 プッピンはあるとき、冬用のスカートをつくろうとしていて、 ふと「雪の結晶模様をぬいつけたら、素敵だろうな」と思 いつきました。そして、昨年もたしかそんなことを思いついた けれども、思いついたときすでに雪の季節は終わりかけていた ことも、思いだしました。
「そうだ、今からはじめれば、まにあうわ」
 さっそく白いノートを取り出してきて、雪の結晶をスケッチ しようとしましたが、はて雪の結晶とはそもそもどんな形をし ていたでしょう。考えれば考えるほどわかりません。
「いったいなにをやってるのプッピン」時は夜中の二時です。  寝ぼけまなこで起きだしてきたポッペンはびっくりしました。 プッピンの白いノートブックが、星の形とも矢印ともつかない 不思議な幾何学模様でいっぱいになっていたからです。
「雪の結晶って、どんな形をしてたっけ」
 プッピンは今にも泣き出しそうです。
「そんなことはね、」言いかけたポッペンは、つと台所へ走っ ていきました。そして冷蔵庫の中から青い牛乳の紙箱を取り出 すと、ノートブックの前にトンと置いたのです。
 なんと、その牛乳の箱にはたしかに、まるで冬の青い夜空に たった今舞い降りてきたかのように、ふるえる切っ先を持つ六 角の花びらのような雪の結晶が、堂々とかがやいているではあ りませんか。
 プッピンがそれを夢中でスケッチしたことはいうまでもあり ません。まるで、急がないと結晶が溶けてなくなってしまうと いわんばかりに、プッピンは鉛筆を動かしつづけたのです。

 そんなわけで、プッピンがつくった冬用の青いスカートには、 白い絹糸で刺繍された雪の結晶模様が、一番星のようにかがや いているのです。

(おしまい)

 
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